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陸上養殖は儲かるのか?参入事例とビジネスの可能性

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陸上養殖は儲かるのか?参入事例とビジネスの可能性

近年、海を使わず陸上施設で魚介類を育てる「陸上養殖」が注目を集めています。天候や海洋環境の影響を受けにくく、都市部や内陸地域でも展開できる新しいビジネスモデルとして、多くの企業が参入を始めています。本記事では、陸上養殖の特徴や収益性、実際の参入事例、さらにビジネスとしての可能性と今後の課題について解説します。

目次


陸上養殖とは?仕組みと注目される理由

陸上養殖とは、海や川などの自然環境を利用せず、人工的に整備された施設内で魚介類を飼育する養殖方式です。主に使用されるのは「閉鎖循環式システム」と呼ばれるもので、水槽内の水をろ過・再利用しながら水質を管理する仕組みです。この方法により、外部からの病原菌侵入リスクを減らし、飼育環境を安定させることができます。

陸上養殖が注目される背景には、気候変動や海洋汚染、赤潮といった自然要因に左右されにくいという特長があります。従来の海面養殖は、天候や海況に大きく依存するため、漁獲や育成に不安定要素が多く、リスク管理が困難でした。一方、陸上であれば、水温や酸素量、水質などを細かく制御できるため、安定的な供給体制を築きやすくなります。

また、都市近郊や内陸部でも施設を設けることができるため、流通コストの削減や鮮度保持の面でも優位性があります。輸送距離を短縮できることで、飲食店や消費者に“水揚げ直送”に近い品質で提供できるのは、大きな価値となります。

さらに、近年のサステナビリティ意識の高まりも追い風です。海洋資源の保護と両立できる養殖方法として、持続可能な水産業の構築を目指す動きの中で、陸上養殖はその中心的存在として期待されています。

儲かる仕組みは?陸上養殖の収益構造

陸上養殖で「儲ける」ためには、単なる飼育だけでなく、収益構造全体を理解したうえで効率的な運営が必要です。陸上養殖のビジネスモデルは、魚介類の生産・販売による売上と、それにかかるコスト(初期投資、餌代、水道光熱費、人件費、メンテナンス費用など)を差し引いた利益で構成されます。

まず売上の面では、高級魚種や希少性の高い魚を選ぶことで、販売単価を大きく引き上げることが可能です。例えば、完全養殖のクロマグロ、トラフグ、ウナギなどは高値で取引される傾向があり、一定の品質を安定的に供給できれば高収益が見込めます。また、地元ブランド化や飲食店との提携、直販などで付加価値をつけることも、利益向上の有効な手段です。

一方、コスト構造においては初期投資が大きな課題です。水槽設備、ろ過システム、水質管理機器、給餌装置など、高性能な設備には相応の資金が必要になります。しかし、これらは一度整備すれば長期間使用できるため、耐久性や省エネ性能に優れた設備を選ぶことで、長期的には収益性を高めることができます。

ランニングコストとして大きいのが水とエネルギー、そして餌代です。これらを効率よく管理するには、IoTやAIなどのテクノロジー導入がカギになります。水質管理を自動化したり、餌の無駄を減らすことで、大幅なコスト削減と労働力の最適化が可能です。

加えて、BtoB(企業向け販売)だけでなく、BtoC(消費者向け販売)にも対応できる体制を整えれば、利幅をさらに広げることもできます。収益性を最大化するためには、生産効率と販売戦略を同時に最適化することが求められます。

実際の参入事例|企業・自治体の取り組み

陸上養殖は近年、多様な業界からの参入が相次いでおり、注目すべき事例も増えています。特に注目されているのが、大手企業による取り組みです。たとえばNTTやソフトバンクといった通信系企業は、自社のIoT技術やAIを活用して、水質管理や成長予測を高精度に行えるスマート養殖システムを開発。デジタル技術と水産業の融合によって、新しい産業モデルを創出しています。

一方、食品メーカーや水産加工業者も原料の安定確保を目的に陸上養殖に投資しています。養殖から加工・販売までを一体化することで、品質と流通のコントロールが可能となり、高付加価値な商品開発やブランド構築にもつながっています。

また、地方自治体が主導するプロジェクトも活発化しています。人口減少や漁業者の高齢化に悩む地域では、若者や異業種からの起業家を受け入れる形で陸上養殖を推進。地元高校と連携した教育プログラムや、クラウドファンディングによる資金調達など、新たな地域活性化策として期待されています。

こうした事例の共通点は、テクノロジーや異業種のノウハウを活かして、従来の水産業にはない価値を生み出している点です。単なる“魚を育てる場所”ではなく、“地域資源”や“都市型ビジネス”として陸上養殖を再定義する動きが広がっており、今後ますます多様な参入が見込まれています。

陸上養殖のメリットと競争優位性

陸上養殖が注目される最大の理由は、その環境制御の自由度の高さにあります。海面養殖と異なり、天候や海流、赤潮などの自然要因に左右されず、安定した飼育が可能です。これにより、収穫量や品質のバラつきが少なく、計画的な生産・出荷が行える点が、大きなメリットとなります。

また、閉鎖循環式のシステムを活用することで、水の再利用ができ、環境負荷を抑えた持続可能な養殖が実現できます。限られた水資源で運営できるため、都市部や水源の乏しい内陸地域でも事業が展開できる柔軟性は、他の水産業にはない競争優位性といえるでしょう。

さらに、都市近郊での生産は流通面でも強みがあります。消費地に近い場所で育てられた魚介類は、輸送時間が短く、鮮度の高い状態で飲食店や小売業に届けることができます。この「地産地消」に近いモデルは、消費者の健康志向や食の安全意識とも親和性が高く、販売面での強みとなります。

もう一つの利点は、衛生管理とトレーサビリティの徹底がしやすい点です。完全にコントロールされた環境下で育てられた魚は、病気のリスクが低く、抗生物質に頼らない生産が可能となります。これは海外輸出や高級飲食店との取引を目指す際にも大きな武器になります。

これらのメリットを活かすことで、差別化された高品質な商品を安定的に供給できる体制を築くことができ、価格競争に巻き込まれないビジネスモデルを構築することが可能です。



初期投資・運用コストとリスク管理

陸上養殖は高収益が期待される一方で、高額な初期投資と安定運用の難しさが課題です。特に、閉鎖循環型システムに必要な水槽、ろ過装置、ポンプ、酸素供給装置、監視システムなどの導入には数千万円から億単位の費用がかかる場合もあり、資金計画が重要となります。

また、施設の維持・管理には電力や水道などのランニングコストがかかり続けます。エネルギー消費が多いシステムでは、電気代が利益を圧迫することもあるため、省エネ設計や再生可能エネルギーの活用が注目されています。さらに、餌代も継続的なコストであり、魚種や成長速度によって大きく左右されるため、無駄を出さない給餌技術の導入が求められます。

こうした課題に対しては、リスク管理の徹底がカギとなります。例えば、水質悪化による大量死や機械トラブルに備えて、監視体制の強化やバックアップ設備の設置、保険加入などを検討する必要があります。また、事業計画段階での精密なシミュレーション、第三者によるアドバイザリー活用なども有効です。

さらに、初期投資を抑えるためには、スモールスタート型の導入や自治体・国の補助金制度の活用も有効です。経済産業省や水産庁が提供する支援制度、あるいは地方創生プロジェクトと連携することで、資金負担を軽減しながら始めることが可能です。

高コストの裏にある安定性と高品質を、いかにして利益に変えるか。陸上養殖の成功には、技術と経営の両面からのアプローチが不可欠です。

まとめ|陸上養殖の将来性と今後の展望

陸上養殖は、気候変動や海洋環境の悪化といった課題を背景に、今後の水産業を支える重要な存在として期待されています。持続可能性、安全性、収益性という三拍子が揃ったこの分野には、今後も国内外からの注目が集まり、技術革新と市場拡大が進むことで、より多くの参入者が現れると見られています。

特に、スマート養殖と呼ばれるIT技術との融合は、業界の進化を加速させています。自動給餌や遠隔モニタリング、AIによる異常検知など、人手不足をカバーしながら品質を高める技術は今後ますます一般化していくでしょう。また、陸上養殖は都市部で展開できる数少ない1次産業でもあり、環境ビジネスや都市農業との親和性も高いことから、新しい形の“都市型水産業”として発展する可能性も秘めています。

一方で、参入には依然として高い壁があることも事実です。資金調達、技術習得、販路開拓など、乗り越えるべき課題も多く、成功には計画的な運営と明確な戦略が必要不可欠です。

それでも、漁業の未来を切り開く新たな道として、陸上養殖は確かな可能性を持っています。持続可能な社会の実現と、高品質な水産物の安定供給を両立する手段として、今後ますますの発展が期待される分野です。今こそ、その可能性を見極め、新たな一歩を踏み出すタイミングと言えるでしょう。

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