福岡県初!産官民の3社連携における「Jブルークレジット取得検討会」
今とても大切な海洋の取組の1つとして、CO2排出量が大幅に削減されることが期待されるJブルークレジッ...
瓜生 光
現在、漁業において用いられている漁網をはじめとするアイテムは、その多くがプラスチック素材です。しっかりと管理されていれば素材自体に問題はありませんが、万が一海洋上に流失してしまったり、不法投棄してしまったりすると、海が汚染されるリスクが高まります。
プラスチック素材が問題になる原因として、自然環境でほとんど分解されない性質が挙げられます。自然分解される素材であれば問題はありませんが、そうでなければさまざまな悪影響は避けられないでしょう。
海中を漂流、もしくは海岸に漂着したプラスチックごみがどんどん蓄積されていけば、海洋汚染や海の生物の誤飲など、さまざまな悪影響を引き起こすのは間違いありません。
とはいえ、現在の漁業においてプラスチックは必要不可欠です。たとえば牡蠣パイプではどうしてもプラスチックが必要となるため、「使わない」という選択肢をとるのは現実的ではないでしょう。
プラスチックをどうしても使わなければならない以上、水産業事業者に求められるのはゴミを出さない意識です。プラスチックごみが出た際には必ず回収・清掃する意識を強く保ち、積極的にリサイクルを進めていく施策を練らなければなりません。
漁業において利用する資材・漁具には、いくつかのリサイクル方法が存在します。海の幸を守り続けるためにも、海洋汚染はできるかぎり防がなければなりません。
そうしたなか、「漁網のリサイクル」は有効な対策となるでしょう。漁網は使い続けているとどうしても劣化してしまうものですが、これが何らかの原因によって海洋上に流出してしまうと、深刻な海洋汚染につながります。
使用済みの廃棄漁網は、劣化によって強度や耐久度が低下しており、再利用は難しいのがこれまでの現状でした。しかし、2022年度までに実施されてきた水産庁事業の成果もあって、今までは困難とされていたポリエステルの「マテリアル・リサイクル技術」が開発されることに。この結果、廃漁網を利用して新たな漁網を製造するというリサイクルが可能になったのです。
ただし、使用済み漁具は塩分・海洋生物の付着物が多かったり、そもそも複数の素材が使用された複雑な造形物であったりすることから、リサイクルがされないケースが多々あるのも現状です。今後はこうした漁具についても、何らかの活用法を見つけることで、海洋汚染防止につながっていくでしょう。
海洋汚染を防ぎ、いつまでも美しい海や豊かな海洋資源を保持するため、漁業者と地域社会は互いに協力しつつ、資材・器具のリサイクルといった対策を進めています。各地域でさまざまな取り組みを進めていくことが、海洋汚染対策につながっていくのは間違いありません。漁業者と地域社会による海洋汚染防止に向けた取り組み事例をいくつか紹介します。
東北地方の漁業が盛んな地域では、使い古され使い道がなくなってしまった漁具をジャケットにリサイクルする試みが実施されています。特に、廃棄する漁網については扱いに困っている漁師も多いため、廃漁具の提供は積極的に行われています。
回収された漁網は愛知県内の工場に運ばれ、再生プラスチックの原料として使用されるペレットに加工されます。これがジャケットの生地に生まれ変わるのです。加工された生地は上質な手触りや、着心地の良さが評価されています。
マグロ漁に使われていた網は、非常に丈夫で耐久性に優れていることもあり、ジャケットの素材にぴったりとされています。今後は量産化も目指しており、これによって漁網の海洋流出を防ぐ効果が期待されます。
九州地方の鹿児島県では、鉄道会社と漁業事業者が連携して海洋汚染対策を実施しています。取り組み内では、廃棄された漁網を回収し、都内の再生素材メーカーが再原料化を行っています。
この再生素材は、アパレルメーカーの加工によって、Tシャツとコースター型記念プレートとして生まれ変わることに。今後もこの取り組みは積極的に行う方針であり、地域として環境問題解決への道を模索しています。
九州地方や四国地方では、海底ゴミの改善に向けた取り組みを開始しています。香川県は、2013年9月、全国に先駆けて「かがわ『里海』づくりビジョン」を策定。これにより、全県域で、「人と自然が共生する持続可能な豊かな海」の実現を目指す方針がまとまりました。
取り組みの一環には、漁業者、内陸を含む全市町、県の協同による「海底堆積ごみ回収・処理システム」の構築が挙げられます。これは香川県独自の取り組みであり、海洋汚染対策に向けた大きな効果が期待されています。
廃漁具は海洋汚染を引き起こすリスクがあり、何らかの対策が急ぎ求められる状況となっています。そんななかでも、今回紹介したように地域一丸となって対策に取り組めば、解決への足がかりも見えてくるでしょう。地球全体の環境を守るためにも、地域一丸となって何ができるか、漁業関係者としてしっかりと考えていきたいところです。