
少子高齢化が進む日本は、さまざまな業界で人手不足が深刻な問題となりつつあります。そうしたなか、各業界が注目しているのが技能実習生です。開発途上国などから技能取得のためにやってきた外国人の存在は、水産業界にとっても大きなものとなりつつあるのは間違いありません。そこで今回は、技能実習生に関係する各データを紹介しつつ、今後どのような関係性を築くべきかについても解説します。
目次技能実習生とは
日本では国際貢献を目的として、開発途上国などから外国人を最長5年間にわたって受け入れ、OJTを通じて技能を習得・移転してもらう「技能実習制度」を設けています。この制度を利用し、「技能実習」の在留資格を得て来日した外国人が技能実習生です。
技能実習生は日本で専門的な技術・知識を学び、帰国したあとはそれらを活かして母国の発展に貢献することが目的とされています。申請者が本国でどのような職に就いているかはしっかりチェックされ、無関係と判断された場合は上陸基準適合性が認められません。
また、技能実習制度は発展途上国への国際協力の一環として始まった制度です。そのため、アメリカやイギリスといった先進国から技能実習生を受け入れることは許可されていません。現在、技能実習生として認められるのは日本と技能実習に関する取り決めがされた、14の発展途上国のみとなっています。
注意点として、技能実習制度はあくまで実習生たちが将来的に母国へ帰国した際、学んだ知識を活かして活躍してもらうための制度です。日本の企業が「安く雇える人材」として受け入れるものではありません。しかし、近年では低賃金労働者という扱いを受けがちとなっており、大きな問題となりつつあることは把握しておきましょう。
水産業界と技能実習生のデータ
水産業界においても、技能実習生は重要な存在となりつつあります。他業界と変わらず、水産業界も働き手不足は深刻な問題となっており、人材確保に向けたさまざまな対応をとっています。そんななかで、水産業界に携わる技能実習生は増加しつつあるのが現状です。ここでは、水産業界における技能実習生の各データについて詳しく紹介します。
水産業界全体のデータ
水産業界全体のデータを見てみると、現在も全国で6,298もの漁業集落が存在しています(2013年現在)。しかし、漁業分野における就業者については年々減少の一途をたどっており、1998年から2017年までの約20年間でほぼ半減となりました。
また、雇われ就業者数についても減少を続けており、漁業分野の有効求人倍率は漁船員2.52 倍、水産養殖作業員2.08 倍と深刻な人手不足の状態です。各水産業者は人材確保に向けて最大限の努力をしているものの、漁業分野においては2019年度からの5年間で2万人程度の人手不足が見込まれるなど、即効性のある改善策は見つかっていません。
これを踏まえ、漁業分野では9,000人を上限とした技能実習生の受け入れが決定。新型コロナウイルス感染症の影響もあって受入れ見込数が2023年度末まで最大6,300人に変更となる措置はあったものの、多くの技能実習生が水産業界に携わっています。
業種別データ
2021年末の時点において、日本で働く技能実習生の数は27万6,123人にものぼります。そのうち、漁業関係に従事する在留者は2,267人に。農業関係の2万4,522人、建設関係の6万1,260人、食品製造関係の5万4,264人と比べると、やや少ない数となっています。
また、漁業関係に携わる在留者は、具体的に以下のような作業に従事しているため確認しておきましょう。
作業名 |
在留者数 |
かつお一本釣り漁業 |
242 |
延縄漁業 |
63 |
いか釣り漁業 |
160 |
まき網漁業 |
363 |
ひき網漁業 |
179 |
刺し網漁業 |
36 |
定置網漁業 |
116 |
かに・えびかご漁業 |
45 |
ほたてがい・まがき養殖(養殖業) |
1,063 |
全体としては、漁船漁業と養殖業でほぼ半数ずつとなっており、それぞれ重要な存在になっていることが伺えます。
国別のデータ
水産業界に携わる技能実習生の国籍についても、データによって明らかにされています。水産庁が発表した「漁業における技能実習生の状況」によると、国別のデータは以下の通りです。
国名 |
割合 |
ベトナム |
53.6% |
中国 |
29.5% |
インドネシア |
15.6% |
フィリピン |
0.9% |
モンゴル |
0.9% |
上記のデータを見てもわかるように、ベトナムが半数以上を占める結果となりました。依然として中国からの技能実習生が多い一方で、インドネシアやフィリピンは少数となっています。
水産業界と技能実習生の未来予測
すでに多くの技能実習生が作業に従事している水産業界。人手不足に悩まされる水産業界では、技能実習生の職責がますます大きくなる可能性があります。
日本にやってくる技能実習生は現在、漁船漁業・養殖業関連の10種の作業や、水産加工食品製造業・水産練り製品製造業における10種の作業について実習。現場の作業を通じて高いスキルが身につくため、母国へ帰国後は地域の経済発展に貢献することが見込まれています。
技能実習生はたびたび低賃金労働が問題となりますが、水産業界では事業所管省庁および関係団体の協議により、技能実習生の保護を図る仕組みを設置。業界全体として技能実習の適正化に努めており、今後はより働きやすい環境の実現が期待できるでしょう。
技能実習生は今後の水産業界にとって大切な存在に
水産業界が人材不足の傾向にあるのは事実であり、技能実習生が重宝される存在となっているのは間違いありません。実際、すでに数千人の技能実習生が水産業に携わっており、今後もますます増加する可能性があります。ただし、技能実習生を単なる「低賃金労働者」として捉えるのは禁物です。しっかり仕事に向き合う仲間として、適切な業務を任せるようにしていきましょう。