特定技能のこれまでの動きとこれから|水産業との関わりは?

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瓜生 光

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水産業界では深刻化する人手不足に対応するためさまざま施策を練っていますが、根本原因である少子高齢化や地方の過疎化は進む一方であり、難しい状況にあるのは間違いありません。そんななか、国内人材の確保が難しいのであれば、外国人に目を向けるといった傾向は強まりつつあります。そこで注目されているのが「特定技能」です。今回は、水産業界でも無視できない制度となっている特定技能について詳しく紹介します。

目次

特定技能とは?

特定技能とは、日本において20194月に創設された在留資格であり、これにより国内において人手不足が顕著となっている12分野14業種の「特定産業分野」で、即戦力となり得る外国人材の就労が可能となりました。

この特定技能の在留資格を取得するためには、技能実習生と違い特別な育成などを受けずとも一定の業務をこなせる水準を備えた即戦力であることが求められます。

また、特定技能には大きく分けて「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類が存在するのも特徴です。特定技能1号は12分野(14分野)、特定技能2号は介護系を除く11分野で指定されており、そのほかにもさまざまな違いがあります。

・特定技能1

「特定技能1号」は法務省の公表している「特定技能ガイドブック」にて、「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」とされています。特定技能1号に該当する分野は、以下の通りです。

・介護

・ビルクリーニング

・建設

・素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業

・造船・舶用工業

・自動車整備

・航空

・宿泊

・農業

・漁業

・飲食料品製造業

・外食業

上記の分野におけるスキルを備えているかどうかについて、基本的には試験が実施されています。加えて、在留期間の上限は「5年」であり、期間満了を迎えた場合には帰国しなければなりません。

・特定技能2

「特定技能2号」は法務省にて「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」と定められています。創設当初は「建設業」「造船・船舶工業」の2分野のみに限定されていましたが、2023年から介護を除く特定技能1号と同じ11分野への拡大が決定しました。

特定技能2号の大きな特徴として、1号の在留期間が「5年」を上限としているのに対して、上限が設けられていない点が挙げられます。また、条件を満たしている場合には、家族帯同ができる点もポイントです。

特定技能の経緯

人手不足の深刻化は、水産業界のみに限った問題ではありません。実際、総務省による労働力調査年報を見てみると、日本の労働力は2016年時点で6,648万人でしたが、将来的には下落が予想されています。今後少子高齢化が加速していくと、ますます労働人口は減少していくでしょう。

労働人口が減少すれば、当然労働力需要を日本人のみでカバーするのは困難に。そこで日本政府のとった対策が、2019年に創設された特定技能だったのです。特定技能という新たな在留資格の導入により、日本政府は2019年から5年間で最大34万人の外国人労働者受け入れを計画。実際に、現段階でも特定技能によって来日した外国人労働者は、さまざまな分野で作業に従事しています。

2023年には特定技能2号の範囲が大きく拡大したこともあって、今後さらに外国人労働者の活躍の幅も広がっていくはずです。

これからの特定技能

特定技能の在留資格によって日本滞在を許可されている外国人数は、20219月時点で約38000人となっています。日本政府は新制度の創設時、5年間で約345000人を上限としていたことを考えると、制度開始からの2年半は予測を大きく下回る数字となりました。

その原因の一つに、新型コロナウイルス感染症の世界的流行があったのは間違いないでしょう。感染対策の一環として厳しい渡航制限が設けられたこともあり、外国人が来日するのは非常に難しい状況となっていました。

また、特定技能は他の在留資格と比べても審査条件が厳しく、手続きが複雑であった点も数が伸びなかった理由の一つに。制度に対する理解が進んでいなかったこともあり、外国人側も企業側も消極的だったのです。

ただし、現在は特定技能に対する理解も深まりつつあり、在留資格を得た外国人数は増加傾向にあります。少子高齢化による人材不足は今後も改善が難しく、いずれは日本政府の定める最大数への到達が見込まれています。特に、特定技能2号の範囲が大きく拡大したことは大きな影響を与えるでしょう。

特定技能と水産業

特定技能の創設は人手不足に苦しむ多くの業界に影響を与えました。漁業分野も例外ではなく、特定技能の在留資格を得て来日した外国人を受け入れることで、事業継続を模索する動きが期待されます。

現在の問題として、全国で6,298もの漁業集落が存在する一方(2013年)、就業者自体は年々減少傾向に。1998年から2017年までの約20年間で就業者数はほぼ半減となっており、漁業分野の有効求人倍率は漁船員2.52 倍、水産養殖作業員2.08 倍と深刻な状況です。

また、既存の漁業従事者も高齢化が顕著であり、ここから毎年1,000人の新規雇われ就業者

を維持したとしても、人手不足の状態は続くと見られています。そうしたなかで、経済・社会基盤の持続可能性を阻害しないためにも、在留資格「特定技能」によって来日した外国人には大きな期待が寄せられています。

人手を確保することでニーズに応じた水産物を安定供給できる体制が確保されることとなり、漁業の未来を守る効果が期待できるでしょう。

特定技能への正しい理解が人手不足解消の鍵に?

漁業分野では深刻化する人手不足への迅速な対策が求められており、即戦力となる外国人労働者の受け入れは事業継続に向けて必要不可欠となりつつあります。

漁業の継続・発展のためにも、関係者は特定技能について正しく理解しつつ、外国人労働者の受け入れを検討してみてください。

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