福岡県初!産官民の3社連携における「Jブルークレジット取得検討会」
今とても大切な海洋の取組の1つとして、CO2排出量が大幅に削減されることが期待されるJブルークレジッ...
瓜生 光
第一次産業である漁業においてもデジタル化の波は広がっており、スマート漁業が注目され始めています。
スマート漁業とは、IoT技術を用いて漁場や養殖場におけるさまざまなデータを収集し、多岐にわたる業務の効率化・省力化を目指すスタイルの漁業です。
これまでの漁業では、多くの面においてベテラン漁師の「勘」に頼る場面が多々ありました。
ただし、このやり方は属人的であり、新たに漁師を志す方にとって「壁」になっていたのも事実です。
スマート漁業でこうした重要情報をデータ化していけば、誰であっても正確な漁場の情報を取得できるようになります。
また、データ化された情報は「漁師の勘」以上の正確性が期待できるため、より安全な漁業の実現も図れます。
スマート漁業の浸透が進んでいる背景には、業界全体が抱える課題があります。
そのなかでも人手不足は顕著な問題となっており、解決のためには待遇面改善などの対策を講じる必要があるでしょう。
ここでは、なぜ今スマート漁業が必要とされているかについて、いくつかの理由を紹介します。
スマート漁業が進められている大きな理由として、「人材不足」が挙げられます。
水産庁による「水産業の就業者をめぐる動向」で発表されたデータによると、2021年の漁業就業者は12万9,320人となっており、これは前年比4.7%減少となってしまいました(※1)。
原因として、少子化や地方の過疎などさまざまなものがあります。漁師が「きつい」というイメージを抱かれやすい仕事であることも、原因として大きいでしょう。だからこそ、若者世代からの関心を少しでも集めるため、スマート漁業の浸透と業務の効率化が急がれています。
漁業者が人手不足に陥る原因には、「不安定な収入」も挙げられるでしょう。
漁獲量は天候や海の状態に左右されやすく、若者世代が重視する「安定した収入」が見込めないこともあります。実際、漁師の収入は80年代と比べて減少傾向にあります。
少しでも多くの人たちに漁業への関心を持ってもらうため、漁師の所得向上は大きな課題と言えるでしょう。
スマート漁業が浸透し、デジタル技術を駆使することで海流などのデータを収集できれば、安定した漁獲量につなげられる期待が持てます。
これまでの漁業は、漁業者自身の「勘」に頼ることが多く、新参者にとっては「ハードルの高い業界」というイメージを抱かれがちでした。
しかし、スマート漁業が浸透し水温や塩分濃度など多くのデータを簡単に収集できれば、漁業に必要なスキルの標準化が促進されるでしょう。
これにより、高齢化、少子化、過疎化による後継者不足に悩まされがちな漁業従事者の、大きな助けにもなることが期待されます。
また、水産資源のデータを収集できれば、計画的な資源管理、漁獲量調整、物流効率化などさまざまな面で活用できるのは間違いありません。
こうした点からも、現在の漁業ではスマート漁業によるIoT活用の需要が増加しているのです。
現在の日本では、すでにスマート漁業を導入している会社や漁場が複数存在します。具体的にどのような取り組みを実施しているか、ここで確認していきましょう。
大手通信会社では、スマート漁業実現に向けた実証実験を開始しています。
センサー、通信機能などの機能を備えたスマートブイを利用して、センサーデータおよび気象データから漁獲量を予測。
個人の勘に頼らない安定した漁獲量の確保を目指しており、効率化向上を見込んでいます。
また、このスマートブイについては、より軽量化・省電力化を進めるなどの改良を実施。
これにより、さらなるデータの拡充・分析精度向上・応用範囲拡大などを目標としています。
スマート漁業の一環として、都内のソフトウェア開発企業が漁業者向けサービス「トリトンの矛」を開発。
これは長年にわたって経験豊富な漁師が蓄積してきた技術や経験をデータ化し、効率性・生産性の向上や次代を担う若手への継承を目的とした取り組みです。
具体的には、蓄積されていたデータをAIを用いて解析することで、最適な漁場の提案が実現します。
本来ならベテラン漁師からのアドバイスがなければたどり着けない場所に、誰でも向かえるようになるため、大きな成果が見込めます。
サバの産地として知られている福井県小浜市。しかし、近年では全国的なサバの漁獲量減少に追随するように、漁獲量が激減しているのが実情です。
そこで、少しでも漁獲量を回復するため、スマート漁業の導入によってサバの養殖業の強化を図っています。
これまでは、養殖のサバに与える餌のコストが課題になっていました。また、餌量の管理についても漁業者の勘に頼る部分が多く、効率性にも問題を抱えていたのです。そこで、こうした作業にAIを導入。水温の自動記録や餌の調整をAIに任せることで、効率性が大きく改善しています。
世界有数のマグロ消費国である日本。養殖にも力を入れており、現在も研究が進められています。
一方で、マグロ養殖は赤潮被害への対策が求められており、長崎県五島市では対策のため空撮用と採水用、2種類のドローンを導入。
これによって、海の色の変化を素早く正確に察知できるようになりました。
赤潮の予測は今まで海に船を出して採水する必要がありましたが、ドローンを導入したことでコスト削減に成功しています。