福岡県初!産官民の3社連携における「Jブルークレジット取得検討会」
今とても大切な海洋の取組の1つとして、CO2排出量が大幅に削減されることが期待されるJブルークレジッ...
瓜生 光
日本の水産物のなかでも、主要な輸出品として多くの国と取引されていたホタテガイ。しかし、2023年に中国が日本からの水産物を全面禁輸としたことを受け、ホタテ漁は大きなダメージを受けることになりました。こうした事情を受け、現在は国や自治体を挙げてホタテを消費する動きが見られています。そこで今回は、現在のホタテに関する情報や、全国で行われているホタテの消費運動について詳しく紹介します。
目次日本のホタテガイは非常に高い評価を得ており、これまで世界各国に輸出がされてきました。農林水産政策研究所によると、2019年の品目別輸出金額でホタテガイは第1位となっており、その人気が伺えます。なかでも顕著なのが中国への輸出量であり、世界シェアの輸出量は約6~8割、輸出金額は4~5割となっていました(※1)。日本のホタテガイはアメリカ産などに比べても実が大きく、海産物の消費が増加している中国でも、特に高い人気を誇っていたのです。
中国へ輸出されるホタテガイは、殻付きの冷凍品がメインとなっているのが特徴。それに対して、EU諸国などの他国に輸出されるホタテガイは冷凍貝柱が中心となっており、輸出量・輸出金額はほとんど横ばいの状態でした。また、韓国への輸出は冷凍貝柱だけでなく、生鮮(活)や干し貝柱についても好調となっています。
こうした状況もあり、養殖ホタテの生産量が日本一とされている青森県では、円安の状況もあって販路拡大を模索。青森市内にある水産加工会社では、毎年200~300トン程度の加工したホタテを、アメリカや東南アジアに輸出しています。
順調に輸出量を増やしていたホタテガイでしたが、2023年8月を境に状況は一変します。日本政府は同月24日より、東京電力福島第1原発のALPS処理水放出を開始すると発表。国際原子力機関(IAEA)からは海洋汚染などの心配はないと発表されていますが、特に中国がこの決定に対して激しく反発しており、日本からの水産物を全面的に禁輸とする措置を発表する事態に。これによって、漁業関係者への深刻な影響が懸念されています。
実際、北海道内から8月に中国へ出荷された水産物輸出額は、前年と比べて約7割減の18億6千万円にまで落ち込む結果に。函館税関の発表によると、北海道から中国への水産物輸出額は2021年以降増加し続けており、2022年4月には前年比72%増の79億円にまで到達。2023年に入っても前年比で順調に増加していたものの、処理水放出によってこの流れは完全にストップすることになりました。
特にダメージを受けたのは、中国への輸出がメインとなっていたホタテガイです。前述したように、北海道の水産業全体の輸出額は69%減の18億6千万円でしたが、ホタテガイを含む甲殻類・軟体動物については前年比77%減の11億7千万円となっており、39億円も売り上げが減少する事態となっています。
ここまで紹介したように、ホタテ漁は東京電力福島第1原発のALPS処理水放出、それにともなう中国の水産物全面禁輸によって、深刻な影響を受けることになりました。現在、少しでもそのダメージを軽減するため、国や自治体を挙げてのサポートが実施されており、ホタテの消費を伸ばそうとする動きが広がっています。ここでは、そのなかから主だった取り組みをいくつか紹介します。
農林水産省内にある霞ヶ関官庁初の食堂「あふ食堂」では、10月2日~13日までの間、「食べるぜニッポン!水産フェア~サカナホタテタベタイ~」イベントを開催しました。本イベント期間中、水産物輸出において大きなダメージを受けた青森県産ホタテガイを使用した商品を提供する取り組みを実施しました。いずれの商品も青森県産ホタテの魅力が詰まったものとなっており、消費の促進が狙いです。本食堂では今後も生産者の立場に立ち、「魚食」を盛り上げるための取り組みを続ける意向を示しています。
中国による日本産水産物全面禁輸の措置を受け、水産加工業者の多くは行き場を失ったホタテを倉庫に抱えることに。この負担を少しでも軽減すべく、北海道の森町では地元の水産加工業者からホタテを買い取り、全国の学校給食へ無償提供する取り組みを開始しました。児童生徒1人当たり3粒が行き渡る予定となっており、これによって地元業者を支援するだけでなく、全国の子供たちに北海道産のホタテの魅力を知ってもらうことを目的としています。
青森県産ホタテガイの海外輸出量が減少したことを受け、大手コンビニエンスストアでは2023年10月下旬より、店内調理サービスでおにぎりを展開する東北地区460店舗にて、「おにぎり ホタテフライマヨ(青森県むつ湾産ホタテ)」の販売を開始。この商品を販売することで、合計約700kgの青森県むつ湾産ホタテガイが使用される計算となります。
法人だけでなく、一般家庭でもホタテを消費することでの支援は可能です。宮下一郎農林水産大臣が9月に行われた会見で「ホタテを1人5粒食べて」と呼びかけたように、一人ひとりの協力が生産者への大きな助けになるでしょう。ここでは、家庭でもできるおすすめのホタテ消費方法を3つ紹介します。
・ホタテとエリンギのガーリックバター炒め
エリンギとベビーホタテを輪切りで同じようなサイズに調整したうえで、オイスターソースを加えると味わいがアップ。ご飯との相性も良く、お箸が進む一品になるでしょう。お弁当のおかずやお酒のおつまみにもぴったりな料理です。
・ホタテとブロッコリーのソテー
にんにくをたっぷり含ませたオリーブオイルを使い、ベビーホタテとブロッコリーを炒めるだけで、ご飯ともパンとも合う一品が完成。ポイントとして、ブロッコリーを電子レンジで温めておくと、食感が良くなるためおすすめです。
・ベビーホタテとトマトのジュレサラダ
ベビーホタテをたっぷりと使った贅沢感のある華やかなサラダ。ホタテの旨味とトマトの酸味が絡み合い、さっぱりとした味わいです。ゆずポン酢醤油をスープやごま油と一緒にゼラチンで固めてゼリー状にするので、食べ応えあるサラダになります。
中国の日本産水産物全面禁輸の影響を受け、ホタテ漁には深刻な影響が生じています。それでも、日本のホタテ漁を守るため、現在は官民を挙げた支援が行われるなど、国内の消費量を増やすための取り組みが見られているのは事実です。一般家庭であっても、ちょっとした料理にホタテを使用することで支援はできるため、少しでもこうした取り組みが広がっていくと良いと言えます。