リース事業の活用について|漁船、漁具の新調に!

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瓜生 光

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漁業をするうえで、欠かせないのが漁船や漁具です。しかし、これらは時間の経過とともに劣化していき、そのまま使用していると予期せぬトラブルが生じる恐れもあります。
一方で、新調するためには決して安くない費用が生じることから、決断に二の足を踏んでしまい、そのまま廃業となってしまうことも。
そこで、おすすめしたいのが日本政府も推し進めている「リース事業」の活用です。
リース事業をうまく利用すれば、資金力がなくても漁船や漁具を新調できる期待が持てるでしょう。今回は、漁師であれば把握しておきたいリース事業について詳しく紹介します。

目次

 

リース事業とは?

リース事業とは、漁業以外の分野においても普及しつつある事業であり、「リース会社がクライアントの求める機械や設備を長期間賃貸する仕組み」を指します。
漁業におけるリース事業は、第2次安倍晋三内閣が打ち出した水産政策であり、正式名称は「水産業競争力強化漁船導入緊急支援事業」です。
現在は「新リース事業」と呼ばれていますが、以前より使われる「リース事業」という呼び方が定着しています。

漁業のリース事業は、環太平洋経済連携協定(TPP)によって漁業が受ける影響を加味し、対策の一環として打ち出されました。
その内容は、漁を行ううえで必要となる漁船や漁具を、漁師個人ではなくリース事業者となる漁業団体が取得。
その後、当該の漁師に対してリースするというものです。これにより、漁業者一人ひとりの経済的負担が軽減されることになり、漁船や漁具を新調しやすくなりました。

新リース事業の仕組み

新リース事業について詳細を把握しておくと、さまざまなメリットを享受できます。
ただし、新リース事業にはいくつかの種類や、リース期間などがあるため、利用してからトラブルとならないためにも事前に把握しておくことが重要です。
ここでは、新リース事業の種類、期間、国の予算について詳しく紹介します。

リース事業で使用できる漁船の種類

リース事業で扱われる漁船について、これまでは中古船が一般的でした。
しかし、近年では中古船市場が逼迫している状況もあり、漁船の確保に苦戦するケースも増加しつつあります。
そのため、条件に該当する中古船が見つからなかった場合には、新船の建造も可能となりました。

中古船が見つかったとしても、取得や改修の費用が新船建造費より高額となる場合もあるでしょう。
そうしたケースであれば、中古船が見つからなかったときと同様に、新船の建造が許可されています。

漁船の建造・所有については漁業団体が担いますが、費用については半分を国が支援。ただし、事前に取得価格等適正審査委員会による審査を受ける必要があります。

リースされる船の使用期間

リース事業で使用可能な漁船の利用期間については、それぞれの種類によって異なります。
水産庁の定めた漁船の法定耐用年数は、500トン以上の鋼船が12年、500トン未満の鋼船が9年、20トン以上の軽合金船が9年、20トン以上のFRP船が7年となっており、20トン未満の鋼船、軽合金船、FRP船は5年となっています。

そのため、リース事業で用いられる漁船についても、この法定耐用年数を守らなければなりません。
リース事業では中古船を使用するケースも多いため、使用できる期間については注意が必要です。

リース事業に対する国の予算

TPP対策のため、漁業のバックアップを強く意識する国は、リース事業に対してまとまった予算を割いています。
2015年度には70億円、2016年度に1425,000万円、2017年度に230億円、2018年度には201億円の補正予算を準備。
多くの漁業事業者が、この制度を利用することになりました。

実際、2015年度には301隻、2016年度は548隻の事業承認があったと報告されています。
そのうちの半分以上が新船の建造となっており、漁業にとっては非常に大きな意味を持つ制度となりました。

リース事業のメリット

リース事業を活用することで、漁業従事者は大きく分けて「経済的なメリット」「安全面のメリット」「作業効率面のメリット」を享受できます。
メリットを正しく把握することで、リース事業を利用する決断の後押しになるでしょう。ここでは、リース事業を受ける3つのメリットを紹介します。

経済的なメリット

漁船の購入・維持には膨大なコストが発生し、こうした原因から漁業を続けたくても続けられなくなるケースも見受けられます。
リース事業を利用すれば、こうしたコストを大きく削減することが可能に。
漁船の取得費だけではなく、漁労機器の更新などを含んだ改修費についても事業に組み込まれているため、経済的に大きなメリットとなるでしょう。

安全面でのメリット

漁業を営む漁師のなかには、漁船や漁具の老朽化に頭を悩ませている方もいるはずです。
古くなった船や道具をそのまま使用していると、予期せぬトラブルに見舞われるリスクも少なくないため、廃業を余儀なくされるケースもあります。
リース事業の活用によって、使用する漁船をアップグレードできれば、こうした危機を回避できるでしょう。
リース事業では新船を利用できることも多く、安全性だけでなく生産性についても大きな向上が見込めます。

作業効率面でのメリット

リース漁船では、中古であっても機能性の高い船や、新船が利用可能です。
これにより、「船上の作業スペース拡大化」「積載量の増量」といったメリットを享受できるでしょう。
また、利用できる漁船にはサイドスラスターを装備できるタイプもあるため、多少の潮流であれば影響を受けず養殖施設に接近できるなど、効率的な作業も可能に。漁場までの往復回数減少も見込めるようになれば、燃油代削減による効率上昇も期待できます。

リース事業の申請の流れ

リース事業申請をするためには、審査を通過しなければなりません。審査においては、まず以下の書類を揃える必要があります。

・水産業競争力強化漁船導入緊急支援事業 価格審査申請書

・導入する漁船の主要目等

・取得価格の内訳(中古船購入および改修の場合のみ)

・同地区、同船型の装備実態等に関する資料

・広域浜プラン計画達成のために必要である漁船であることの説明資料(必要とされる場合)

・同型船の売買状況等、直近の建造価格など価格相場に関する資料

・価格の根拠資料

・漁船原簿(新船の場合は除外)

・中核的漁業者名簿

上記の書類を揃えたら、水産業・漁村活性化推進機構に応募してください。審査を通過すれば、リース事業を活用できるようになるでしょう。

リース事業の活用で、漁業の生産性を向上させよう

さまざまな理由により船が持てなかったり、老朽化している船を買い換えられなかったりするケースもあるでしょう。
しかし、新リース業を活用すれば、作業効率の良い船の利用が実現し、生産性向上などが見込めるようになります。
今回紹介したように、リース事業の活用にはいくつものメリットが存在するため、これを機会にぜひ利用を検討してみてください。

 

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