1. HOME
  2. 【漁具】GYOGOOオフィシャルサイトブログ
  3. 人気記事 海について
  4. 漁業センサスとは?目的と概要をご紹介

漁業センサスとは?目的と概要をご紹介

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
漁業センサスとは?目的と概要をご紹介
日本の漁業の生産構造や就業状況が現在どうなっているのか、たとえ漁業従事者であっても完璧に把握するのは難しいでしょう。
そうしたなか、行政機関までもがこうしたデータを正確に取得できなければ、人手不足や漁獲量減少などの課題を解決するための正しい選択ができない恐れがあります。
そこで重要となるのが「漁業センサス」です。今回は、農林水産省が実施する漁業センサスについて詳しく紹介します。

目次

漁業センサスとは

漁業センサスとは、農林水産省が実施する施策です。日本における漁業の生産構造および就業構造の明確化を目標としています。
具体的には、5年ごとに水産業を営む全国すべての世帯・法人を対象とした調査を実施。
これにより、漁村・水産物流通・加工業といった漁業関係者の実態・変化を総合的に把握することを目指しています。

ここで得た情報を活かし、国や各自治体は水産基本計画に基づいた水産行政施策に関連する基礎資料を作成・提供します。
つまり漁業センサスは、漁業全体の活性化のサポートをするうえで非常に重要な調査なのです。

なお、「センサス」の語源は古代ローマの職業である「センソール」だと言われています。
センソールはローマ市民の数を5年ごとに調査する仕事で、このセンソールが行う調査を「センサス」と呼んでいました。このことから、センサスは多項目にわたる調査を意味しているのです。

漁業センサスの沿革

日本における漁業センサスは、1949年(昭和24年)に始まりました。
それ以前も、1892年(明治 25年)の水産事項特別調査や1947年(昭和 22 年)の水産業基本調査、1948年(昭和23年)の漁業権調査などが行われてきましたが、「漁業センサス」として漁業の構造的特質を明らかにするための調査が実施されたのは、1949年からです。

ただし、1892年に行われた水産事項特別調査の時点で、水産業者数や漁場・漁船・漁具の実態、水産物の輸出入などは調査対象になっていました。
これは現在の漁業センサスと近い内容だったため、現在の基礎になったと言えるでしょう。

また、1963年(昭和38年)の第3回までは実施年が45年に1回と実施時期が定まっていませんでしたが、それ以降は5年ごとの実施が定着。
現在まで合計14回の漁業センサスが行われており、そのタイミングでの漁業の実情を報告してきました。

現在、2018 年に行われた調査が最新の漁業センサスとなっています。2023年には15回目の漁業センサスが予定されており、新たなデータを得ることが期待されています。

漁業センサスの目的

これまで実施されてきた漁業センサスには、現在日本で行われている漁業の生産構造、就業構造、そして漁村などの実態を把握したうえで、「水産行政の基礎資料を整備する」という目的があります。基本的には、実施年の111日が基準日とされ、以下の調査が実施されます。漁業従事者の方は、ぜひチェックしておきましょう。

・個人経営体の世帯員数
・従事状況
・就業日数
・兼業状況
・保有漁船隻数
・トン数
・漁業種類
・雇用者数
・漁獲物の販売金額 

調査方法については、統計調査員が調査対象である漁業従事者などに対して、調査票を配布。必要事項を記入してもらい、調査員が回収します。
近年ではインターネットを利用した回答も可能であり、利便性が向上しているのもポイントです。

過去の調査結果

2023年10月時点で最新調査結果となっている2018年漁業センサスを見てみると、水産物それぞれの優れた栄養性が評価されたことや、世界的な人口増加・経済発展の影響もあり、需要増大が認められていることがわかります。

その一方で、世界の水産資源についてはその多くが満限もしくはそれ以上に利用されており、資源管理が課題となっていることも判明。
だからこそ、日本では国民に対して安定した水産物供給を実現するため、周辺海域の豊かな水産資源を適切に管理する姿勢が求められています。

しかし、現在の日本では漁船の高船齢化、漁業従事者の減少および高齢化などを原因とした、水産物の生産体制脆弱化も明らかに。
さらに、国民の「魚離れ」も改善せず、この状態が続けば豊かな水産資源を活かせない状態に陥ることが懸念される結果となりました。

こうした状態から脱却するため、国は2001年(平成13)年6月に制定された「水産基本法」に基づく新たな水産基本計画を2017年(平成 29) 年4月に策定。
これにより、浜プラン(水産業活性化のための改革)の着実な実施および人材育成による水産資源のフル活用、国内の資源管理高度化および国際的資源管理の推進、持続可能な漁業・養殖業確立、加工・流通・消費・輸出に関係した施策展開、漁港・漁場・漁村の総合的整備などに関係した施策が実施されることになりました。

2023年漁業センサスのメリットと概要

2023年11月、最新の漁業センサスが実施される予定となっています。
最新の調査データが判明すれば、現在の漁業従事者が抱える課題を国や自治体が把握することで、改善にも大きく役立つでしょう。
調査内容は主に海面漁業調査、内水面漁業調査、流通加工調査の3つで構成されており、それぞれの詳細は以下の通りです。

・海面漁業調査
「漁業経営体調査」と「海面漁業地域調査」、2つの調査を行います。
漁業経営体調査では市区町村区域内の海面漁業に係る漁業経営体が、海面漁業地域調査では沿海市区町村にある漁業協同組合が調査対象です。

 調査方法としては、統計調査員が対象に調査票を配布・回収する自計調査がメインとなります。また、オンラインを利用した調査方法回収にも対応可能です。
加えて、調査対象から面接調査などの希望があった場合には、調査員が赴くケースもあります。

 ・内水面漁業調査
「内水面漁業経営体調査」と「内水面漁業地域調査」、2つの調査が行われます。
内水面漁業経営体とは、共同漁業権がある天然の湖沼やそれ以外の湖沼で、水産動植物の採捕が認められている経営体となります。
内水面漁業地域調査は、それぞれの市区町村にある「内水面組合」が対象です。 

調査方法は、対象へ調査票を郵送し、返送またはオンラインによる回収がメインになります。
期間までに回答がされなかった場合には、委託を受けた民間業者が直接訪問し回収するケースも考えられます。 

・流通加工調査
直接水揚げがされている魚市場や、水産物の搬入を受けている魚市場を対象とした「魚市場調査」、特定の施設を有し、水産物の冷蔵・冷凍・加工を行っている事業所を対象とした「冷凍・冷蔵、水産加工場調査」があります。 

調査方法は、「内水面漁業調査」と同様にまずは調査票を郵送で配布。そのうえで、返送もしくはオンライン回答による回収を予定しています。
回答を得られなかった場合には、統計調査員もしくは職員による直接訪問を受けることもあるでしょう。

漁業センサスは漁業の実情把握に欠かせない調査

漁業センサスはこれまで数十年にわたって実施されてきた取り組みであり、国や自治体が漁業の実情を把握するうえでも大きな意味を持ちます。
近年の日本の漁業は人手不足、資源管理、漁獲量減少などさまざまな課題を抱えているからこそ、漁業センサスは重要な役割を担っているのです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加