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ALPS処理水問題を乗り越える|水産物の輸出先の対応!

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ALPS処理水問題を乗り越える|水産物の輸出先の対応!

東京電力福島第一原子力発電所で発生した汚染水に関連する問題は、現在も日本の水産業に大きな影響を与え続けています。特に、ALPS処理水の扱いについては一部の国から大きな反発を招くこととなり、日本の水産物が禁輸されるケースもありました。これにより、水産物の輸出先にも変化が生じているのが実情です。そこで今回は、ALPS処理水問題を経て水産物の主な輸出先がどのような対応をとったのかについて詳しく紹介します。

目次

ALPS処理水問題とは

現在の日本は、ALPS処理水関連でさまざまな問題を抱えています。ALPS処理水とは、東京電力福島第一原子力発電所で生じた汚染水を、多核種除去設備(ALPS)などによって放射性物質を環境放出できる規制基準にまで浄化処理した水です。

また、この処理によって唯一除外できない「トリチウム」についても、処分前に海水で大幅に希釈。安全基準を十分に満たせるものとなっており、環境・人体への影響はないとされています。

安全性については、国際原子力機関(IAEA)のお墨付きを得ているのもポイントです。IAEA2年間にわたる安全調査の結果、ここからの30年間で130万トンが海洋放出される予定の処理水について、報告書で「人及び環境に対する放射線影響は無視できる」と記載しています。

ただし、IAEAによる調査報告があったとしても、すべての国や団体が納得しているわけではないのが実情です。特に、日本との距離が近いアジアの一部国では大きな反発を招く事態となっており、水産物の禁輸などといった措置が取られる形となりました。

また、一部国内企業からも安全性に懸念があるとの表明がされており、日本政府に対して意見書を提出するなどの対応がとられています。

ALPS処理水問題を経て変わった水産物の輸出先一覧

ALPS処理水の海洋放出によって、水産業界も大きな影響が出ることになりました。この措置について日本政府もIAEAも安全性を保障しているものの、決定に対して反発する国や団体はゼロではありません。

水産物の輸出にも異変が生じており、特にホタテは価格下落や販路縮小といった影響が出てしまいました。ここでは、ALPS処理水問題によって変わった、ホタテをはじめとする水産物の輸出先を紹介します。

ホタテ

ALPS処理水問題が発生する前、日本のホタテの主な輸出先は中国でした。しかし、中国ではALPS処理水の海洋放出に強く反発する国の一つであり、日本の水産物の輸入停止を決定。これによって、ホタテ漁は深刻なダメージを負うことになりました。

地域によっては、ホタテの在庫を捌けず冷凍庫の使用状況がほぼ満杯となる事態も。当初はホタテの仕入れや加工に高い費用がかけられ、国内向けに売価を下げることが難しかった事情もあり、新たな買い手を見つけられず苦しい状況に陥ってしまったのです。

それでも、現在は中国向けのホタテを国内販売に切り替えたことで、ようやく価格の下落は収束。現在は横ばいの状態が続いています。

また、中国から香港への輸出変更といった措置もとられていますが、今後中国がどのような対応を示すか不透明であり、新たな輸出先を探すことは急務に。これを受けて、農林水産省ではマレーシアとの関係強化を図っています。

2023年10月には、マレーシアの首都クアラルンプールで日本の水産品の販売支援イベントが実施されました。宮下一郎農林水産大臣も現地に赴き宮城県産のホタテを振る舞うなど、強くアピールしています。マレーシアはALPS処理水の海洋放出後も、日本に対して輸入制限の措置は設けないと政府が明言しており、今後さらなる関係性の発展が期待できるでしょう。

加えて、経済産業省と農林水産省はマレーシア以外の輸出先を見つけることにも熱心です。これまでは主に中国で行われていた殻剥き等の加工を、新たに依頼できる国探しに着手。特に有力候補とされたのは東南アジアのベトナムで、政府主導で現地水産加工施設の視察・商談への参加希望事業者などの募集も実施されました。

そのほかにも、シンガポールやタイ、アラブ首長国連邦といったアジアの国々や、イギリス、フランス、イタリア、オランダといった欧州各国との関係構築を模索。さまざまな対策を練っており、ALPS処理水放出による影響に対応できるよう努めています。

ナマコ

ALPS処理水問題によって影響を受けた水産物は、ホタテだけではありません。海の宝石と呼ばれるナマコもまた、少なくない影響を受けた水産物です。ホタテ同様、ナマコもALPS処理水の海洋放出前までは中国への輸出に大きく頼っていました。中国においてナマコは高級食材であり、高い需要を誇っていたのです。

しかし、すでに紹介した通り中国は日本のALPS処理水放出を受けて、日本の水産物の禁輸を決定。これによって、新たな輸出先を決めなければならなくなりました。

業者のなかには、輸出先を香港に変更する対応をとるところも。ただし、輸出先の変更には資金も必要となり、売上金額が大幅減少したことから、水産業者にとって大きな痛手となっているのは間違いありません。

こうした事情もあり、ナマコ漁が見送られるケースも発生。ナマコの水揚げ量日本一を誇る銚子市も、202310月には水揚げの見送りを決定しており、地域の水産業に大きな影響が生じています。

まずはALPS処理水への理解を深めよう!

ALPS処理水問題は、日本の水産業関係者に多大な影響を与えています。少しでも効果的な対策を練るためには、ALPS処理水に関する知識を深めつつ、諸外国がどのような反応を示しているか、他業者がどの国に輸出先を変更しているかなどを正確に把握しておく必要があるでしょう。今後も情勢は変わる可能性はあるため、最新の情報には常にアンテナを張っておくようにしてください。

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