福岡県初!産官民の3社連携における「Jブルークレジット取得検討会」
今とても大切な海洋の取組の1つとして、CO2排出量が大幅に削減されることが期待されるJブルークレジッ...
瓜生 光
海に捨てられたごみによる海洋汚染は、日本だけでなく世界的にも深刻な問題として広がっています。このまま海洋ごみが放置され続けていると、豊かな海の資源に重大な影響を及ぼす危険性は否定できません。そのため、すぐにでも問題解決に向け取り組む必要があるでしょう。今回は、海洋ごみについて解説するとともに、現在漁業者が行っている取り組みについても詳しく紹介します。
目次海洋ごみとは、海岸に打ち上げられていたり、海面を漂っていたりするごみの総称です。放置していると海洋汚染を招く危険性があり、自然消滅しない「海洋プラスチック」は特に深刻な問題となっています。
こうした海洋汚染は地球規模で広がりを見せ、北極や南極でもマイクロプラスチックが観測されるように。世界各国で海洋ごみ問題は大きく取り上げられるようになっており、現在はごみ減少のためさまざまな取り組みが進められています。
海洋ごみは海上で廃棄・投棄されたり、陸上から大雨などで海洋に流れ込んだりしてごみとなります。海洋ごみにはさまざまな種類がありますが、基本的には「漂着ごみ」「漂流ごみ」「海底ごみ」に分けられるため、ここで特徴を確認しておきましょう。
・漂着ごみ
海岸に打ち上げられたごみを指します。環境省によると、2018年度に回収された漂着ごみは約3.2万トンにもなり、その処理も含め大きな問題となっているのは間違いありません。
・漂流ごみ
海面や海中を漂うごみです。ビニール袋などはその代表例であり、海の生物が誤って食べることで命を落とす原因となることも。生態系維持のためにも、改善に向けた取り組みが必要です。
・海底ごみ
海底ごみとは、海底に沈下して堆積したごみを指します。基本的には、重量があり漂流しないごみとなるでしょう。その場に堆積していくと海洋汚染につながり、漁などにも深刻な被害を及ぼします。
海洋ごみと聞くとまずはビニール袋やペットボトルなど、主に海を訪れた観光客がもたらすものが想像されがちです。ただし、海洋ごみになるのはこうしたごみだけではありません。基本的に、海洋ごみになるのは以下のものとなります。
・不用物のポイ捨て
・観光客や地元民による海岸への置き捨て
・船からの不用物の投棄
・海上船からの貨物・漁具
・他大陸や島の海岸からの漂着
・水路・川からの流入物
このように、たとえ海の近くで生活していなかったとしても、ポイ捨てしたごみが水路・川から海まで流され、海洋ごみにつながるリスクは否定できないのです。海洋ごみの多くは日常生活で生じやすいプラスチックごみであるため、普段からしっかりとごみ処理に対する意識を持つことが求められます。
海洋ごみは水質汚染につながるだけでなく、海で暮らす生き物にも深刻な影響を及ぼします。ウミガメや海鳥などが餌と勘違いして海洋ごみを食べてしまった結果、健康を害したり命を落としたりするケースは決して珍しくありません。
こうした事象が増加し続ければ、海の生態系にも影響を及ぼす危険性が高まるでしょう。結果として、漁業などにも悪影響が生じる恐れがあります。
海洋ごみによる健康への悪影響は、海の生物に限った話ではありません。人間にとっても、何らかの影響が生じる懸念があります。なぜなら、海洋ごみの多くを占めるプラスチックについては、有害性が指摘される添加物が使用されているケースがあるからです。こうした添加物は非常に微細なマイクロプラスチックになっても残留するという特徴があり、海洋生物やそれを食した人間にも炎症やアレルギー反応などの悪影響を及ぼしかねません。
世界的な問題となりつつある海洋ごみについては、漁業者にとっても決して他人事ではないでしょう。漁業で日常的に使用される漁具が誤って流出してしまえば、海洋ごみの遠因となりかねません。だからこそ、海の豊富な資源を維持するべく、これ以上海洋ごみが増え過ぎないよう動き出す必要があるのです。ここでは、具体的に漁業者がどのような取り組みをしているかについて紹介します。
海洋ごみのなかでも、特に深刻化しているのが「ゴーストギア」です。ゴーストギアとは、何らかの理由によって放棄・投棄された漁網などの漁具を指します。このゴーストギアはほとんどがプラスチック製品であるため、海や海洋生物への悪影響が懸念されていました。
一方で、現在は改良された漁網が普及しつつあります。こうした漁網はたとえ流出したとしても自動的に分解されたり、漁獲機能が失われたりする機能を備えているため、悪影響を最小限にとどめる効果が期待されています。
漁網の投棄などを防ぐべく、日本では近年漁網の再利用が注目されています。2021年には漁師・メーカーの協働による、廃棄漁網素材を使用した鞄の開発を発表。日本政府としても環境汚染防止策の一環として後押ししており、今後ますますの普及が期待されています。
これまで使用済みの漁網の回収や洗浄は非常に手間がかかることもあり、投棄されやすい傾向にありました。だからこそ、こうした漁網の再利用が可能だと周知されれば、ゴーストギア対策にもつながるでしょう。
水産庁では、海洋ごみ対策の一環として、環境省などと連携して漁具のリサイクル技術開発・普及を推奨。また、国際環境保全団体WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)のプロジェクトでも、漁業者・自治体・企業と連携した漁網リサイクルによる新製品製造・販売を進めています。
現在は、リサイクルが簡単にできる単一素材の漁具、素材の判別が容易な漁網網地などの開発が進行中。水産庁は製品の精度を上げるため、漁業者や漁業関係団体の積極的な協力を求めており、業界一丸となって後押しする姿勢が求められています。
海洋ごみは世界的な問題となっており、このまま放置していると海洋資源に深刻な影響が生じるのは避けられません。漁業者としてもそうした事態は、絶対に阻止する必要があるでしょう。現在は官民を問わず海洋ごみに対する取り組みが進められており、漁業者としてもこうした施策への協力を惜しまないことが、改善の一歩となるはずです。