陸上養殖とは?最新事例もご紹介!

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漁業には大きく分けて漁船漁業と養殖漁業がありますが、養殖漁業のなかにもいくつかの種類が存在します。そのなかで近年注目を集めつつあるのが「陸上養殖」です。メジャーな養殖方法である海面養殖とは異なる特徴を持ち、陸上養殖だからこそのメリットと課題が存在します。そこで今回は、陸上養殖の特徴について紹介していきましょう。

陸上養殖とは

陸上養殖とは、陸上に水槽などの設備を置き、人工的な環境下で魚の養殖を行う手法です。一般的な養殖は海面など自然環境の一部を区切って行われますが、陸上養殖は水面から完全に区切られているのが特徴と言えます。

近年では陸上養殖が注目され始めており、各企業や研究機関によるプロジェクトも進行しています。今後さらに発展していく可能性があるため、概要について再確認しておきましょう。

陸上養殖のやり方

陸上養殖の環境を築くためには、さまざまな設備を用意しなければなりません。多くの場合において、以下の設備が必須となります。

陸上養殖のデータ

現在、陸上養殖がどの程度普及しているのか気になる方も多いでしょう。ここでは、陸上養殖について現在判明しているデータを詳しく紹介します。

陸上養殖のメリット・デメリット

陸上養殖には、海面養殖にはないメリット・デメリットが存在します。実際に導入してから困惑しないためにも、あらかじめ特徴についてしっかり把握しておきましょう。

<陸上養殖のメリット>
<陸上養殖のデメリット>

陸上養殖の種類

陸上養殖には大きく分けて3つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。自身に適した養殖方法を選択するため、ここで特徴を確認してください。

陸上養殖の事例

現在の日本では、実際に陸上養殖を導入して成果を挙げている漁港も存在します。ここでは、そのなかから3つの事例を紹介します(※4)。

事例1:かけ流し式によるヒラメ養殖

鳥取県の泊漁港では、かけ流し式による陸上養殖を実施。八角水槽の18.5 ㎡サイズを18 基、15.0 ㎡サイズを1 基用意し、稚魚については鳥取県栽培漁業センターで購入しています。エサについては高タンパク、低脂肪のヒラメ用配合餌料のみを使用。飼育開始から約2年で1kgまで成長しており、単価3,000円(1kg)のヒラメを安定して供給できています。

事例2:かけ流し式によるサクラマス養殖

富山県の伏木富山港では、かけ流し式によるサクラマス養殖をスタートしています。直径 8m、深さ 1.6mの水槽を16~20 基用意。大門漁協から10 月に採卵し、翌年 5月まで飼育された稚魚を手に入れています。餌料には 配合飼料(EP) を用いており、自動給餌器より1日2回給餌。サーモンに比べ臭みの少ない味を実現しており、全国的な単価(1,500円)より高めの1,800円~2,000円(1kg)で取引されています。

事例3:閉鎖循環式によるクエ養殖

長崎県の長崎漁港では、閉鎖循環式によるクエ養殖を実施。直径5mの水槽を使用しており、長崎県栽培公社から全長約 15 ㎝、約 20~50g の種苗を導入しています。配合飼料(EP)を用いており、増肉係数は2.0程度。海面養殖だと3~4年で1kgの成長となるところ、2年で1kg、3年で2kg 以上の成長を実現させています。

陸上養殖の課題

さまざまなメリットを備え、近年では導入が増加傾向にある陸上養殖。一方、海面養殖に比べると歴史が浅く、未発達な部分があるのは確かです。管理の難易度も高く、不測の事態によって安定した生産がストップするリスクはあるでしょう。

現在はこうした課題の解決に向けた取り組みが進められており、以下の成果が期待されています

こうした取り組みが成果を挙げれば、陸上養殖はより効率的で低コストとなり、漁業全体にとっても大きな変革が見込めるでしょう。

陸上養殖では確かな情報収集がカギに

陸上養殖は外部環境の影響を受けにくく、漁業権も必要ないなどいくつものメリットを備えた養殖方法です。ただし、現状ではまだまだデメリットや課題もあり、始める前にはしっかりと準備しなければなりません。設備については慎重に吟味する必要があるため、情報収集は欠かさないようにしてください。

【出典】

※1 養殖業成長産業化推進協議会「我が国の養殖業と成長産業化に向けた論点整理(令和2年3月10日版)」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/yousyoku/attach/pdf/seityou_19-25.pdf

※2 水産庁「令和4年度 水産白書 全文」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r04_h/trend/1/t1_2_1.html

※3 富士経済「次世代アグリ&食糧ビジネスの最前線と将来展望2022」
https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=22108&la=ja

※4 水産庁「漁港水域等を活用した増養殖の手引き 令和2年9月」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/seibi/attach/pdf/zouyousyoku_tebiki-22.pdf

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