知って驚き!?日本世界の魚貝の品種改良の可能性に迫る 

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瓜生 光

B!

地球温暖化によって海水温上昇が深刻化し、世界的に海洋資源保護の必要性が高まる昨今は、水産物を安定供給していくために何らかの工夫が必要な時代となりつつあります。そこで、現在注目を集めているものが「貝の品種改良」です。たとえば、ホタテ貝とヒオウギ貝を掛け合わせることによって、生存率を上げる方法が見つかるかもしれません。今回は、温暖化の影響を受ける可能性がある貝の特性を紹介しつつ、品種改良の可能性についても触れていきます。

目次

ホタテ貝の特性

日本人にとってなじみ深く、さまざまな料理に用いられているホタテ貝。ホタテ貝は冷水域を好む貝であり、日本においても北海道や青森県など北部で高い生産量を誇っています。

一方で、現在も世界全体の課題となっている地球温暖化問題がこのまま進んでいけば、海水温上昇などにともないホタテの生存率が低下してしまうリスクは否定できません。ホタテ貝は成長しやすく経済を支える重要な水産資源であるからこそ、温暖化への対応を少しでも進めなければならないのです。

青森県の水産総合研究所が2022年に発表した「青森県陸奥湾のホタテガイにおける高水温適応策」では、異常高水温時の状態であってもホタテ貝のへい死率を半減させる施策が公表されています。ここでは、2526℃台の水温の延べ日数がホタテガイのへい死率に影響しているというデータに注目。養殖漁場内における水温モニタリングシステム構築や、水温予測技術の開発が重要と提唱しています。

なお、少しでもホタテ貝の生産量を維持するためには、その他の対策も必要です。ホタテ貝のへい死原因としては養殖篭の上下動による外傷も挙げられるため、各地域では養殖篭の上下動を軽減する改良調整玉や波浪緩衝体などの開発も進められています。

ヒオウギ貝の特性

ヒオウギ貝は「長太郎」「バタバタ」といった呼称でも知られており、形はホタテ貝とよく似ています。違いとして、ホタテ貝が冷水域を好むのに対して、ヒオウギ貝は高水温な内港の静かな海に生育する点が挙げられるでしょう。

ヒオウギ貝は天然色による発色が特徴的で、オレンジ、イエロー、レッド、パープルなどカラーバリエーションもさまざま。それでいて、味についてもホタテより一回りほど小さいサイズながら、厚みと弾力があり食べやすいものとなっています。こうした理由から、ヒオウギ貝は観賞用・食用の双方で人気を集めているのです。

また、ヒオウギ貝はホタテ貝の品種改良を進めていく中で、注目を集めている貝でもあります。前述した通り、ヒオウギ貝は温暖な環境に適応しているため、地球温暖化による海水温上昇の影響を受けにくいのが長所です。この点が、冷水域でなければ養殖が難しいホタテ貝と大きく異なります。

そのため、現在はヒオウギ貝の遺伝的特性を活かし、ホタテ貝の温暖化耐性を高める試みが検討されています。うまくいけば、海水温上昇にも適応できるホタテ貝が生まれることで、今後も安定した供給の実現が期待できるでしょう。

掛け合わせによる耐性強化の可能性

地球温暖化による海水温上昇が避けられない状況となりつつある中、注目したいのが「ホタテ貝とヒオウギ貝の掛け合わせ」です。

ホタテの魅力的な味や成長速度と、ヒオウギ貝の温暖化耐性を兼ね備えることができれば、海水温上昇への有効な対策となる可能性も高まるでしょう。ホタテ貝が温水域でも高い生存率を示せるようになれば、今後の養殖漁業の難易度を下げる効果も期待できます。

研究と実証試験の進展

現在、ホタテ貝とヒオウギ界の掛け合わせ技術については、検討段階にあります。ホタテ貝とヒオウギ貝のハイブリッド種が温水域であっても比較的高い生存率を示す結果が得られれば、品種改良の可能性も高まるはずです。

もちろん、まだまだ検証を続ける必要はあるものの、将来的な商業養殖に向けたポテンシャルは十分にあると言えるでしょう。加えて、こうした取り組みが成功すれば、ホタテ貝以外の水産物についても品種改良が進められていく期待が持てます。これにより、気候変動に対応した養殖業の発展実現も夢ではなくなるはずです。

結論と展望

今後も進んでいくとされる地球温暖化を受けて、ホタテ貝の養殖業は何らかの対策を必要としています。そんな中で、現在注目を集めているのがヒオウギ貝との掛け合わせによる品種改良です。もちろん、ホタテ貝のみに限らずこうした品種改良が進んでいけば、温暖化に対応した養殖業の持続可能性を高める効果が期待できるでしょう。研究がこのまま順調にいけば、商業化に向けた取り組みも加速していくはずです。